――今回の2枚のくレーベルコンピ最新作では熊井さんがフィーチャーされていますが、その経緯は?
KREVA●きっかけはタイトル先行なんです。まず【其の四】を“その死”、【其の五】を“その後”と捉えるのは俺がひとりで考えたわけじゃなくて、【其の二】から【其の三】にいくあたりでCUEZEROとふたりで考えたコンセプトで。『“その死”がきて、“その後”ってアツい! 絶対やろう!』みたいな(笑)。そこから“その死”はこれまでくレーベルで出した曲のミックスCDをやったらおもしろいんじゃないかと思って。“その後”で“吾郎の五曲”っていうのも完全に思いつきで、結果的に熊に両方お願いすることになったんです。
――逆に言えば、いまなら熊井さんにそこまで任せられるということでもありますよね。
KREVA●それもあると思いますね。あと、CDを整理してたら熊からもらったトラックが20曲ぐらい出てきて。そのなかの自分用にいいなと思ってストックしていたやつがあったんですけど、時が経つにつれてフィットしてこなくなって。どうしようかなと思ったときに、くレーベルで使えればいいなと思ったんですよね。
――熊井さん=MPCというイメージなんですけど、MPCを叩くようになったのはいつからなんですか?
熊井●高校を卒業するあたりで叩きはじめて、それからは家で叩いてる程度だったんですけど、実は第1回の『くレーベル祭り』(2005年6/20@渋谷AX)のリハのときにクレさんから『ライブで叩いてみれば?』って言われて。そこから人前で叩きはじめたんですよ。
KREVA●え、マジだ!?(笑)。
熊井●はい、実は(笑)。そこから人前で叩くのがおもしろいなと思って。周りでやっている人もあまりいなかったし、僕はもともとDJからはじめたんですけど、スクラッチとかもいままで勉強してこなかったから、それだったらMPCを練習したほうが自分の武器になるんじゃないかと思って。
――じゃあ、そのライブのリハのときにクレさんから言われてなかったらいまみたいな流れになってなかったかもしれないですね。
熊井●そうですね。間違いなく。
KREVA●それが第1回の『くレーベル祭り』のリハっていうのがいいよね。
――うん、いい話です。それから4年後にこうやってコンピの主役になっているわけですから。まず【其の四】のミックスCDの制作は熊井さんにとってどういう作業でした?
熊井●大変でしたね。“その死”っていうコンセプトを知ってからできあがるまで何個も壁があって。基本的にインストのミックスCDなので、構成にすごく気を遣いましたね。
――何回かクレさんにチェックを入れてもらったりしたんですか?
熊井●とりあえず1回つくったものを聴いてもらったんですけど、そこからはほぼ手を加えてないですね。あとは、ベースのものにクレさんのシャウトを僕がMPCで足して間をもたせたり、インタールードの部分もクレさんに録ってもらって。やっぱり、聴いていて飽きない感じにしたいという思いがいちばん強かったですね。インストのミックスCDって、普段リリックに重点を置いて聴いてる人にとってはすぐ飽きちゃう可能性もあるじゃないですか。そこをすごく考えました。
――クレさんは完成したものを聴いてどういう感想を?
KREVA●いいなと思いました。イントロから俺が前に出したミックスCD(『BEST OF MIXCD No.1』/2007年リリース)のイントロともシンクロさせていて、その時点でよさそうだなと思って。どうやって間をもたせるかっていう部分のアイデアは出しましたけど、最初にもらった時点ですごくよかったですよ。
――『其の五』の5曲で採用したトラックの基準は?
KREVA●5曲で熊のいろんな面を引き出すか、これぞ熊井吾郎という5曲かどっちかだなと思っていたんですけど、トラックがいろいろ揃っていたので前者を選んだという感じですね。
――その言葉どおりBPM、ビートの質感、全体のムード、どの観点からもバラエティに富んだ5曲がそろいましたね。
熊井●トラックをクレさんと選ぶ段階でも「このトラックを使うならこのトラックはいらない」とか、常に5曲のパッケージとして考えて選びましたね。
――客演陣もこのトラックなら、この人を呼ぼうという感じで選んでいったんですか?
KREVA●そうですね。あとはトラックから浮かんできたテーマに合ってる人っていう選び方もあって。「都会陸上feat. KREVA,Romancrew」は、トラックを聴かせないまま全員で集まってから、その場ではい、トラック聴きました、テーマを考えましょうっていう感じで進めて。
――瞬発力重視というか。
KREVA●そうそう。「NEXT LEVEL feat. THE FLEX UNITE,KREVA,SONOMI」は、最初から俺がこのトラックは使いたいって言ってたんだけど、古いトラックということもあってなかなかイメージが浮かばなくて。で、この曲だけはまずFLEX UNITEに一度投げて、返ってきたものに俺がラップを乗せるという感じでやりました。「good boy,bad boy feat. SEEDA,KREVA」は、このトラックをSEEDAとやったらヤバいっていう思いが先にあって。
――ああ、確かにこのメロウなトラックでSEEDAくんが参加しているところにまずグッときましたね。
KREVA●うん。そこから俺はフックを唄おうってなって、フリースタイルでフックの歌詞が出てきたんですよ。そのフックをSEEDAが読み取ってラップの歌詞を書いてくれたという感じです。「無くない!無くない! feat. KREVA,L-VOKAL,AMIDA」ははじめてトラックを聴いたときから〈無くない!無くない!〉ってフックが出てきたから、そういう“無くない話”をしておもしろそうなやつってことでL-VOKALとAMIDAに頼んで。
――この曲は、クレさんが最近よく言っている話としておもしろいラップをやりたいという切り口が早くも具現化していますね。
KREVA●うん、そうですね。「忘れずにいたいもの Remix feat. 千晴,KREVA」は、俺のバージョン(2008年のツアー『クレハーカップ』の来場者だけにダウンロードでプレゼントされた)をそのまま入れるかという話もあったんだけど、千晴もワンマンを経験して、規模の大小があるにせよ俺と同じものが見えてると思うから、じゃあ千晴バージョンを新録しようという話になって。
――こう振り返ってもほんとに充実したコンピになりましたね。
KREVA●そうですね。今回は全国で売るって決めてからつくったというのもデカいと思います。
――最後に今後のくレーベルの展望を聞かせてください。
KREVA●くレーベルという名前がついてるけど、正直言うといままでは自分のレーベルという感覚はあまりなかったんですよね。ただ、これからは意識的に自分が聴きたいものをつくるという考え方でやっていこうと思ってるんです。もっとしっかり作品を出すレーベルにしていきたいと思ってるのと同時に、いままでまったくないタイプの作品を出していきたいですね。ちなみに既に【其の六】の構想も進めています。
――楽しみです。熊井さんはくレーベルでどんな活動をしていきたいですか?
熊井●僕は、いままでどおりクレさんたちに影響されるところはどんどん影響されて、その上で自分のなかから出てくるものを増やしてそれをもっとクレさんにぶつけられるようにしていきたいですね。ほんと、何から何までしてもらってばかりなので、少しずつ返していきたいです。
Interview&Text:三宅正一氏
